Special #1 ~ジョウミチヲの妄想2万字インタヴュー

ジョウミチヲの妄想2万字インタヴュー

前作のリリースが2012年の4月だから実に1年半という短いタームでwilberryの3枚目のアルバムが届いた。その前、つまりデビューアルバムから前作リリースまでの間隔が12年もかかっているわけだから、これは奇跡的なスピードで仕上がったアルバムと言ってもいいかもしれない。そしてその中身は会心の出来なのである。
前作で提示したダンスミュージックの振り幅を更に広げ、ありがちな単調な4つ打ちビートの曲ではなく、聴き手を軽やかにメンタルにもフィジカルにも踊らせる10曲が詰まっている。そして、前作が全9曲すべてジョウひとりで作詞作曲を担当していたが、今作はメンバーとの共作が3曲含まれていることがバンドが上昇気流に乗っていることを表している。
ツアーの合間にジョウに一曲ずつ詳しく解説がてら話を聞いた。

インタヴュー=渋崎宗一郎

■前作が出た頃には今作のことを考えていた


──さて、いよいよ「KILLER DANCER LOVER」が完成しました。おめでとうございます。率直な今の気分は?
ジョウ:はい、天才的なアルバムが出来ました^^見事なダンスミュージックアルバムです。
──ほほぉ、自信満々ですね。まずこのアルバムのタイトルはどこから来ているの?
ジョウ:アルバムの1曲目の「K.D.L.」をそのまま省略しないで表記をしただけだよ。前回のアルバムはタイトルを決めるのに少し時間がかかったからね。今回はアルバム全体を象徴的に表す曲があったから丁度良かった。
──前のアルバムタイトルはそんなに時間がかかったんだ?
ジョウ:うん、ギリギリまで決まらなかった。「FORGETTABLE MUSIC UNFORGETTABLE DANCE」って言うのにも長いし、覚えづらいからね。まあ、気に入ってはいるけど。アルバムのタイトルは入ってる曲の歌詞の一部を使うか、曲のタイトルをそのまま使うかどっちかが好きだけれど、前回はそうではなかった。今回はすごくいいね。

──レコーディングはいつ頃からスタートしたの?
ジョウ:曲作りからってことだと去年の初めからだね。前作がリリースされるちょっと前。
──え?前作リリース前?
ジョウ:そう、前作が出た頃には今作のことを考えていたからね。だからずっとライヴをやりながら曲作りは止めなかった。で、レコーディングが始まったのは今年の1月。始まった時点で8曲は出来てた。1月に5曲リズムを録ったあとで、追加で2曲作って全曲揃ったんだよ。もうちょっと早くリリースしたかったんだけれど、思ったよりも録音作業に時間がかかったね。
──前作を作った時と比べて変わったことはある?
ジョウ:基本的には延長線上にあるアルバム。ただ今回は前作みたいに一曲一曲のことよりも、アルバム全体の雰囲気を包む空気を作りたかった。そう言う意味では曲順ってすごく大事なんだけれど、今回はそれもすんなり決まったしすごく満足してるよ。

■つまらない詞を書いたら歌いたくなくなっちゃう


──では、1曲目からいろいろと聞かせてもらいますが、まずその「K.D.L.」だけど、いつ頃の曲?
ジョウ:う〜ん、たしか去年の初めくらいじゃないかな。去年4月のワンマンライヴでやった気がするしね。
──そんなに経ってるんだ?ライヴでもずっとやってきた曲?
ジョウ:さっきも言ったけれど、基本的に曲は休まないで作ってきた。この曲はライヴで披露した回数はかなり多いほうだよ。
──延々、同じコーラスがループしてるのが印象的けど、あれはどうしてああなったの?
ジョウ:元々はスタジオで作ってる最中に俺が間奏でコーラスを作って歌い出して、完成が近づいてきたときにサビでそのコーラスをメンバーに入れてもらうことにした。それでそのままライヴも何回かやってみて、悪くはなかったんだけれど、さらに面白くしたくて、Verveみたいに全面的ループ展開してみようってことになった。あの声はホッシー、安高と俺の3人の声。ブリちゃんはエンジニア係。
──イントロもかなり凝っていて印象的だけど?
ジョウ:ライヴでもイントロはブリちゃんが叩くリズムとループだけで始めてたんだけど、音源化するにあたってギターとドラムのリヴァースを重ねた。それは俺んちでブリちゃんと2人でね。実はアルバム収録の他の曲のリヴァースも入ってるんだけど、良〜く聞いたらわかるかもね。

ジョウ 0──次は2曲目の「SINGIN’ IN THE CLOUDY SKY」だけど、これは安高くんが作った曲?
ジョウ:そうそう、今年の正月に実家に帰ってる間に作った。俺たちのリハの音源とか情報とかいろいろ共有するのにDropboxを使ってるんだけれど、突然「作った」ってメールが来て、札幌からDropboxに音源が放り込まれてた。
──それは安高くんの弾き語り?
ジョウ:う〜ん、どうだったかな。。。ギターと歌以外にも打ち込みでなんか入ってた気もするけれど、ちゃんと覚えてないな。
──ジョウはそれをそのまま歌ったの?
ジョウ:う〜ん、まあ、キーは変えるしメロディのアレンジもするけれど、基本的にはなるべく変えないようにはしたつもり。まだDropboxにオリジナルが残ってるかもしれないから聞き比べてみようかな^^
──安高くんが作ったってことは基本のアレンジも安高くんアイデアってことかな?
ジョウ:そうだね、基本的にはそう。間違いなくアレンジ中に安高が一番喋ってた^^でも歌は難しかったよ。
──なんで?
ジョウ:いや、人の考えたメロディは覚えるのが大変。メロディのアクセントはだいぶ自分のしたい感じに変えたけれど、やっぱり基本は他人のメロだからね。
──なるほど。歌詞はどうだったの?
ジョウ:歌詞は間違いなく力が入った曲だよ。なにしろ自分が作った曲じゃないからね。
──それはどういう意味?
ジョウ:つまらない詞を書いたら、歌いたくなくなっちゃうでしょ、この曲を。それはまずいと思ったから。
──それも安高くんが作ったからってこと?
ジョウ:うん、自分で曲を作ってない分、歌詞を他の自分の曲以上のものにしなきゃ、この曲を同じくらい好きになれないかもしれないって思ったからね。だからだいぶ練って作ったよ。
──満足度は?
ジョウ:いいんじゃないかな。見ての通り原発の歌だけどね。DUSKの時からこういう歌は歌ってきてる。だいぶいいね。満足。

──さて3曲目の「NOT ALONE」。
ジョウ:これも前回のワンマンでやった気がするからかなり古い曲だよ。ま、それでも1年半くらいだけど。結構簡単に出来た気がする。ちょっとイントロだけローゼズっぽいけど、本編に入ると全然違う^^
──”SHE BANGS THE DRUM”?
ジョウ:そんなタイトルだっけ?ちょっとね。でも歌は全然違うとこに行くけどね。やっぱりちょっと前の曲だから前回のアルバムに入っててもあんまり違和感ない曲かもね。かなり明るいし。アルバムの中では珍しく4人の音以外は何も入ってないからライヴ感はあるんじゃないかな。

──さて4曲目は「(EVERYBODY’S) YOUR FAN」。これはリズムが気持ちいいね。
ジョウ:うん、以前は曲作りってだいたいは家で作ってまずギターの弾き語りをメンバーに聞かせることが多かったんだけれど、最近はそのパターンは少ない。これは家でコードとメロをつくって、それでスタジオでみんなにまず、DJ SHADOWの”THIS TIME”って曲を聴いてもらってから、作ってきた曲のコードを教えて、リズムは”THIS TIME”みたいにハネて弾いてもらってそれに合わせて歌って仕上げた。あと、コンガは俺たちのエンジニア兼コンガ番長の佐藤さんが用意してくれたのさ。
──ってことはジョウの中では曲作りの中でリズムが先にあったってこと?
ジョウ:そこまでじゃないけど、ずっと前からハネを強調した曲は作りたくてみんなにこの”THIS TIME”を聴かせてて、こういうリズムで1曲やりたい!って言ってた。で、この曲を家で作ってるときに「お!これは例のリズムでいけそうだな」って思ったわけ。
──歌詞は随分と甘いラヴソングじゃない?
ジョウ:まあ、原発の歌ばっかりじゃ聴くほうも疲れるだろうしね^^アルバムにこういう歌詞の曲は一曲くらい必要じゃない?
──へえ、じゃあ、これはノンフィクション?
ジョウ:まさかね。確かにノンフィクションの歌詞の曲が多いけれど、これは違う。俺はノンフィクションの歌詞しか書かないほどサーヴィス精神がない人間じゃないんだよ。

ジョウ 05──「NIGHTDRIVING」。これはすごいテンション高い曲だね。安高くんのリフが印象的だね。
ジョウ:これは確か仕上がるのに時間がかかったんだよ。2コードでメロディを作ってみんなに聴かせたまでは良かったんだけれど、リズムもいまいち決まらないし、ノリも出ないしで。かと言って、ちょっと同期モノに頼る気も起きなかったから、ずーっと4人で音を出してた。そうしたら安高があのリフを発明したので一気に完成^^
──ジョウの声もかなり高音でキンキン言ってるね(笑)
ジョウ:昔はあんなんばっかだったぜ(笑)
──歌詞は同じ事を何回も言ってばっかりですね?
ジョウ:同じ事をリフレインすることで聴いている人に本当に伝わることってあるんだよ。同じ言葉を1回でなく3回歌ってやっとホントの意味が通じるとかね。そもそも俺は1曲の中で長い歌詞を詰め込むタイプじゃない。
──なるほど。じゃあ、そういう風に沢山歌詞を書いて歌う人に憧れたりとかする?
ジョウ:いいや、全く憧れない。中身がないから余計な歌詞を詰め込みたくなるんじゃない?

■俺たちはそんなんじゃない


──次の「THIS BOOGIE !!!」。これはかなり新境地の曲なんじゃない?
ジョウ:新境地かどうかはわからないけれど、DISCOソングだよね。ホッシーがDISCOをやりたいってず〜っと言っててさ。ただ、そんなこと言われてもいきなりDISCOは作れない、何年も行ったことないし^^。で、ある時スタジオでホッシーが4小節のコードパターンでなんかいい感じのベース弾いてるから「それ誰の曲?」って聞いたら「いや、別に誰のでもないっすよ」って言うから「それずっと延々弾いてて!」って言ってその4小節パターンを聴きながら俺がメロを3種類作った。あっという間にできたよ。サビで始める曲なんていままでは全然ないんだけれど、出来たときからあの始まりだったから変えなかった。イントロとサビ後のコードパターンが変わるところは安高のアイデア。
──オルガンやストリングスも効果的に入ってるね?誰のアイデア?
ジョウ:あれもフレーズの基本はホッシー。ただ実際に録音されてるのは仙台の友人のボララスくん(グッバイボーイズ)が弾いてるのも多いよ。弾いてもらってデータで送ってもらった。いい音してるよね。

──「JET ROLLER COASTER AND FALLIN’ CARPET」。
ジョウ:もうちょっとラップっぽい歌い方をしたかったんだけれど、結局わりとメロディがついちゃったんだよね^^踊れるロックを作るっていうと安直に四つ打ちばっかりになっちゃうバンド多いけれど、俺たちはそんなんじゃない。なんせヒップホップからも影響を受けているからね。これも確か「THIS BOOGIE !!!」と同じようにホッシーのベースから作り始めたんだよ。全く同じ「それ誰の曲?」「いや、別に誰のでもないっすよ」「弾いてて!」パターン。
──パーカッションはどういうアイデアだったの?
ジョウ:あれはみんなでスタジオで決めたよ。基本はブリちゃんが家で組んできて、それを演奏で合わせながら微調整して完成させた。あとは生のパーカッションを入れたかったから、近所の工事現場から鉄パイプを持ってきて、それもブリちゃんがぶったたいて録音したよ。この曲は最初にライヴでやったのは去年の札幌だよ。たぶんスピリチュアルラウンジだったんじゃないかな。いや、サンクルかな。だからレコーディングする頃にはもうかなり完成形に近かった。
──これは歌詞はどういうことを歌ってるの?
ジョウ:震災以降だね。あとはダジャレ、灰色と廃炉。

──「SECRET (TWO HEARTS #2)」。アルバムの中で唯一落ち着いてる感じの曲なんじゃない?
ジョウ:そう?これこそがダンスミュージックだと思ってるんだけれどなー。テンポは踊れる踊れないには関係ないからね。ブリちゃん曰く「これぞwilberryの曲、他のバンドには出来ない」って言ってたくらいの名曲なんだ。
──タイトルの (TWO HEARTS #2)の意味はどういう意味なの?
ジョウ:オリジナルのメンバーで再結成したときにすぐに作った曲で「TWO HEARTS」っていう曲があって、それは結構俺のお気に入りの曲でもあるんだけれど、今回「SECRET」のアレンジまで終わって、さあ、歌詞だってときに、「TWO HEARTS」の第二章みたいな位置づけの歌詞を書きたくなったんだ。で、実際に書いてみたらうまくはまったから記念でタイトルに「TWO HEARTS #2」っていれてみたんだよ。「ロード」みたいに十三章までいくかもね。

ジョウ 03──「LOVE IS PRECIOUS」。
ジョウ:これも4小節の循環コードでメロディを3つ作って別の展開を付け足した。あとリズムは家で作ってる時から決まってたから、ブリちゃんにスタジオでリクエストして叩いてもらったよ。この曲はアレンジしていって出来上がっていく最中に「ああ、もう1枚アルバム出せそうだな」って思ったよ。
──それはどういう意味?
ジョウ:アレンジに少し時間はかかったんだけれど、転調したり、クラップいれたりブレークしたり、たくさんアイデアが4人から出てきたからね。前作をリリースして間もないのに、また良い曲が出来ていくのはすごく嬉しいこと。ライヴで初めて披露したときから、常に後半に演ってる。
──この曲はなんだかシュープリームスみたいですね。
ジョウ:そうだね、ソウルミュージックは普段から好きで聴いてるから影響はあると思うよ。ただモータウンものよりオーティス・レディングとかウィルソン・ピケットのほうが泥臭くて好きだけど。

──いよいよ最後で、「SHE’S SO ELECTRIC」。
ジョウ:3〜4年前にネット配信でのみリリースしている曲だよ。でもアレンジは今のwilberryで表現できるものに大幅に変えたんだ。間奏とアウトロのピアノのアイデアはホッシー。
──ネット配信のみとはいえ、一回リリースしてる曲をどうしてアルバムに改めて入れようと思ったの?
ジョウ:う〜〜ん、この曲は結構気に入ってはいたんだけれど、元のアレンジがなんとなく大雑把というか、なんかしっくりきてなくてライヴでやれなくなってしまっていたんだよ。もう少し曲の熱を下げたくてね。一回完成してしまったアレンジを変えるのは困難な作業だけれど、4つ打ちを基本にして少しずつ無駄を省いていって完成した感じだね。
──歌詞はずいぶんとロマンチックな内容じゃない?
ジョウ:3〜4年前の俺はそれくらいロマンチックだったんだろうね。でもいまでもロマンチックな男だよ。歌詞はLOVEかPEACEをテーマにすることが多いよ、どうしてもね。歌詞の世界くらい理想に走ったっていいと思ってる。ロマンチックで理想主義者なんだよ、俺は。

──さて、10曲すべて話を聞いたけれど、前作を作る時には、もうこの作品のことを考えていて、曲も出来てきていたって言ったよね?ということは、もしかしてもう次の作品の構想や曲も出来上がっているのかな?
ジョウ:それが全くないんだ。次はリフレッシュしてゼロから作りたいね。まだ一曲も作ってない、構想はある程度は出来つつあるけどね。